岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

ロシア本国の株式投資家は戦争の勝利よりも戦争の早期終結を希望している?

アジア太平洋戦争中の日本政府の情報統制に関わらず、当時の株式投資家は戦況をかなり正確に見極めていたという研究結果を読んだことがあります。それによると勝敗を決定づける戦い(たしかミッドウェイ海戦だったかと思います)において、日本政府は国内向けには優勢であると伝えていたにも関わらず、当時の株式市場(市場参加者は日本人です)は株式の売却で反応したとのことでした。当時の日本株投資家が特別な情報網を有していたとは思えませんから、大本営発表の文面の違いから「実は日本は負けているのでは…」ということを察知したのだと思います。

そのような研究結果を知っていただけに、ロシアがウクライナで苦戦しているとの報が多いにも関わらず、ロシア株価が堅調であることについて、不思議な思いを抱いていました。ロシア軍苦戦の報は、何らかの情報統制下であってもロシア株の投資家に伝わるはずだからです。

この違和感をさらに強めたのが、ロシアがウクライナ国内の占領地をロシアに編入するための住民投票を実施することを発表したことを受けて、株価が大幅に下落(10%超の下落)したことです。予定されている住民投票の結果はロシアへの編入が予め予想されているわけですが、占領地をロシアに編入することはロシアの軍事力の追加投入や場合によっては核の使用を可能にすることが懸念されており、戦争は長期化してしまうものの、軍事的にはロシア側に優位になるように思います。戦争の勝利よりも戦争の早期終結を期待しているかに見えるロシア本国の株式投資家の反応に、ロシア株ETFへ投資しており、戦争の早期終結によって自身も利益を得る立場にいる私としては、親近感を抱いてしまいました。

本日発表されたロシアの部分的な動員令に対しても、ロシア株投資家は株価下落で反応しています。ロシア株投資家は戦争の勝利とそれを受けた長期の経済制裁よりも、早期終結を期待していることが明瞭であるように思います。このようなロシア国内の厭戦的な気分が、ロシアのウクライナへの対応にどう影響するのか、今後も見守っていきます。

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社会改善のために金融業界に支払われる手数料は必要悪か?

環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を重視するESGという考え方の広がりとともに、ESG関連で金融機関が得た収入が40兆円超に増加しているとした記事を読みました。40兆円超の中身は、環境に配慮した融資に関連した収入が多いものの、環境に配慮した債券の発行や運用助言による手数料も含まれるそうです。

私は資産運用にESGの考えを導入することは運用実績の追求と両立しないように思われることから疑問であるものの、金融機関が顧客(債券発行の事例で言えば債券の発行体)の同意を得てESGに配慮することは問題ないと思っています。手数料支払に同意しているということは、顧客は手数料支払を上回るメリットを見込んでいるわけで、それを他者がどうこう言う必要はないということです。

とはいえESGを重視することを通じ、40兆円超という多額のお金が金融機関に支払われていることには少し違和感を感じます。ESGが大事だという意見にはある程度は同意するものの、それらを重視するために社会全体が40兆円超のお金を追加的に支払っていることになるからです。40兆円超のお金は(ESGを特別に重視しない)これまで通りの運営をしていれば、支払う必要がなかったということもできます。

ESGのように新しい考え方の広がりは、これらに取り組む人たちに莫大な利益をもたらすものです。これらは社会改善のための必要悪なのだと思いますが、利益と社会改善のメリットのバランスには留意する必要があるように思いました。

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社会問題の解決を学校教育に期待する風潮について。学校で学習すべき事はすでに沢山あるのでは?

金融庁がまとめた今後の方針に、金融教育を国家戦略とすることが盛り込まれているようです。記事によると社会人を含めた全世代を対象に金融教育をほどこす方針とのこと。その金融教育を行う主体として民間金融機関以外を想定しているようで、金融教育を民間金融機関の営業の場に使わせないような配慮を感じることができます。

金融に関する知識を身につけることは悪いことではありません。特に新社会人に対する金融教育は、新社会人が将来を計画する上で有用でしょう。自分を振り返ると、当時どれだけ自分ごととして学ぶかは分かりませんが、そうした機会があっても良いように思います。

ただこれは新たな知識習得の機会が乏しい社会人に限った話※です。学校教育で学ぶべき内容は増え続けており、最近ではプログラミングが学習範囲に含まれていると聞きます。限られた時間で学べる内容に限界がある以上、これ以上学習内容を増やすことは現実的でないでしょう。「金融教育」と大上段に構えずに、家庭科の授業1回分を使って収入の範囲で生活していくこと等、最低限のことを学んでおけば十分であると思います。

新社会人に対する金融教育も、そうした内容に興味がある人とない人で、学習への取り組み姿勢は全く異なると思います。また社会人になるまでの間に、家庭での教育を通じてお金との付き合い方は学んでいるように思います。そのように考えると、社会人に対する金融教育もどのくらいん効果があるのか分かりません。

金融知識の欠如によって苦労する人が存在することは不幸なことだと思います。ただそうした人を根絶するために、全ての国民に対して金融教育をほどこす必要があるのかどうか、知識の欠如を自覚したり不安に思う人向けに選択的に学習機会を提供する等の工夫があっても良いように思いました。

※社会人の知識習得の機会が乏しいことは、それはそれで大きな問題ですが…

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株価回復に要する期間は5-6年?

先日株式が長期的に上昇することを分かりやすく解説する考え方を記事にした際、私の頭によぎったことは「そうは言っても株価が長期的に下落した場合、その影響は大きいのではないか」という自身への反論でした。この反論に対する整理として、株価回復に要する期間を調べようかと思っていたところ、同様の分析を紹介する記事があったので記録しておきます。

記事によると株式市場の主だった下落から回復するのに要した期間(底値から回復に要した期間)は、1929年に始まった世界大恐慌で約13年(米国株の実績)、1973年のオイルショックで約6年(米国株の実績)、2008年の世界金融危機(リーマンショック)で約5年(全世界株の実績)、1990年の湾岸戦争で約5年(全世界株の実績)、1990年代後半のアジア通貨危機で約3年(全世界株の実績)とのことです。またこの他に2015年のチャイナ・ショックで約1年(全世界株の実績)、2020年のコロナショックでは5ヶ月(全世界株の実績)となっていました。

その上で記事では、金融システムが整った世界大恐慌級の下落(この時は株価はピークから80%超下落したとのこと)を想定するのはあまり現実的ではなく、世界金融危機以降の下落幅が参考になるのではないかと整理しています。私もこの意見に賛成で、政府や中央銀行が危機時に果たす役割は1930年代に比べると格段に大きくなっており、世界大恐慌並みの危機を想定する必要はないと思います。このように整理すると、短期的な株価下落が起こったとしても5-6年、かなり余裕をもって10年待てば、株価は回復すると考えて良さそうです。

先日の記事にある通り、世界経済が成長し続けると考えた場合(これは非現実的な仮定でないと思います)、株価も長期的に上昇することが期待されます。短期的に下落するものの、過去実績で5-6年、余裕をもって10年待てば回復すのだとすれば、株式へ投資するリスクは許容できるように思っています。

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いつの間にか底値付近まで下落していた新興国株

昨晩の米国株市場は物流大手企業が厳しい収益見通しを示したことを主に嫌気し、下落しました。収益見通しの悪化はこの企業にとどまらず、幅広い企業に広がることが懸念されているようです。気になって毎週末に更新されている米国企業の収益見通しを確認しましたが、予想者の見通しの更新がまだのようで、顕著な下落は確認できませんでした。ともあれ今月から来月にかけて、株式市場には強めの逆風が吹くという意見が増えている印象です。

そんな中、私が追加投資しようと思っている全世界株と新興国株のETFを確認したところ、新興国株のドル建て価格(米国上場のETFへの投資を検討しています)が今年の最安値付近まで下落していることに気づきました。新興国株は底値をつけて以降、反発が起こらずに低迷していただけに、底値更新がすぐに起こってしまうということです。米国のインフレと金融政策、今後の企業業績の悪化を材料にした今回の下落局面はまだまだ収まる兆しを見せていません。私は全世界株も今年の最安値を更新すると期待しているのですが、その場合は新興国株はさらに下落しそうです。

全世界株が前回底値を下回るにはもう少し下落する必要があり、追加投資を検討する時期はまだまだ先のことだと思っています。ただ新興国株はすでにかなり下落しており、全世界株の下落もあっという間に起こるかもしれないこと、頭の片隅に置いておこうと思います。

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為替介入は短期的にはドル買いの好機になるかもしれない

為替市場では日本当局による為替介入が警戒されています。為替介入の影響を解説した記事を読むと、為替介入が実施されると数円は円高に動くものの、今回の介入は日本政府単独の介入であることからその効果は長続しないと見込まれているようです。そして別の記事では米国の利上げによって、引き続き円安ドル高が継続する意見が紹介されていました。

私はこれらの記事について、説得力を感じています。日銀の金融政策が変わらない以上、日米の金利差は拡大する傾向にあり、それであれば円安ドル高は続くでしょう。今回の為替介入はドル資産を売るものであり、当局が保有するドル資産(外貨準備金)に上限がある以上、無限にドルを売ることはできません。物価上昇を少しでも抑えたい米国が自国通貨安(=輸入物価の上昇)に結びつく介入に強力するとは思えません。

このように考えると日本当局による為替介入は短期的にドル買いの好機になるように思います。私は株安時に株式への追加投資を行いたいと思っており、また株安が近い将来に発生する可能性もあると思っています。実際にドルを買うかどうかは介入実施時に為替レートがどれだけ動くかにかかっていますが、為替介入というドル買いの好機は逃さないようにしたいと思っています。

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猛烈な働き方に必要なものは優れた経営者か、報酬か

日本電産が創業者からの経営引き継ぎに苦労しています。次世代経営者の候補として外部から人材を採用してきましたが、創業者のお眼鏡にかなうことはなかったようで、生え抜き社員を次世代の候補とする体制に改めたそうです。

外部から採用した人材に見切りをつけた際の創業者の発言が強烈です。外部から採用した人材が8時半から9時に出勤することを指摘した上で、社員よりも早く出社していれば結果は違っていた可能性を示唆したとのことです。創業者自身が6時半から7時に出勤していたことから、同様の働きぶりを期待していたものと思われます。このような創業者の猛烈な働き方は現代ではあまり一般的でなくなっています。ただ創業者としては自身の働き方で並外れた成功をおさめてきただけに、次世代候補にも同様の働き方を期待してしまうのでしょう。

このような猛烈な働き方に求められるのは何でしょうか?社員は上司を見ているでしょうから、この創業者が指摘するように経営者自らが猛烈な働き方を選び、周囲に模範を示す必要があります。これまでの日本電産はこのやり方だったと思いますが、これは創業者が経営者であったが故であり、次世代の経営者が同じ方法で経営できるかは未知数です。
一方、猛烈な働き方には報酬で報いることも考えられます。現代では猛烈な働き方を否定的に捉えられることが多いように思いますが、猛烈な働き方をしているように思われる大手企業は、高報酬で社員に報いていることが多いように思います。

これまで傑出した創業者の指導の下で猛烈に働き、高成長してきた日本電産が、今後も同じ働き方を継続するのか。継続する場合、それをどのように可能にするのか、続報を楽しみにしています。

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