岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

株式市場参加者に冷水を浴びせかけた米国消費者物価指数

9月に入って以降、株式市場はスルスルと上昇していました。米国の物価上昇のピークが見通せるようになり、FRBが来年にも利下げに転じるのでは、という見解が広がっていたのがその一因だったかと思います。昨晩発表された米国の消費者物価指数はそうした思惑を裏切り、物価上昇のピークが見通せなくなりました。また以前からFRB高官が物価上昇対策で妥協しない姿勢を示していたことが重なり、株価は大幅に下落しています。

セントルイス連銀のデータベースより

 

私は物価上昇がそう簡単に落ち着くとは思っていなかったため、今回の統計にはあまり違和感はありませんでした。楽観的に思える物価見通しによって株価が上昇し、追加投資の機会を逃したように思っていただけに、今回の下落に少し安心しています。その追加投資の時期ですが、悲観的な市場参加者の意見として10月中旬にかけて株価は下落しそうであると紹介されていました。いつが株価の底なのかは分かりませんが、株式市場に広がっていた物価に対する楽観見通しが強かったのだとすると、物価上昇を警戒する見通しが十分に認知されるまでに時間はかかりそうです。昨晩の消費者物価が変えた株価の方向性は簡単には変わらなかいかもしれません。

悲観論者の意見では株価は6月中旬につけた今年の底値を大きく下回ることになっています。先ほど物価見通しについて「楽観的」と書きましたが、物価上昇にはいつかピークが来ることは確実であり、ピークを確認してFRBの利上げの最終目標が見えてきた後に株価は上昇に転じるのでしょう。底値を大きく下回るかどうかは分かりませんが、底値付近まで下落した後、追加投資の時期をめぐってソワソワすることになりそうです。

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ロシア株投資家にとって朗報?ウクライナ軍がロシア軍を押し返す

償還が決定したロシア株ETF保有している関係で、ロシア株投資家の視点でウクライナ侵攻を見守っています。

私が投資するロシア株ETFは償還が決定したものの、保有資産(ロシア株)を売却することができないため、資産を継続保有することになっています。西側投資家によるモスクワ証券取引所での売買が可能にならないと、保有資産の価値はほぼゼロであり、早期の売買再開が待たれます。西側投資家による売買が可能になるには、ウクライナ侵攻が解決して、ロシア側が外国人投資家の証券売買を許可するだけでなく、西側当局が経済制裁を解除する必要があるでしょう。それには西側・ウクライナ側が優位な形でウクライナ侵攻が解決する必要があると考えています。

そんな私にとって朗報と思われる記事を読みました。ウクライナ軍がロシア軍を押し返しているとのことです。南東部は引き続きロシア軍が優勢という記事も出ており、いろいろな見方が錯綜していますが、ウクライナ軍がなんらかの反撃を成功させたことは事実のようです。別の記事ではウクライナ侵攻に対する士気が高いウクライナ東部出身のロシア軍兵の多くは亡くなっており、仮にロシア側が総動員令をかけたとしても士気の高い兵士を追加投入することは難しいとの分析が紹介されていました。

私が読んだ記事の内容が事実として、ウクライナ軍が局地的に優勢になった場合、ロシア側は総動員令など何らかの対処を行うはずです。その対処が奏功しないことが確認された後、ロシア側はウクライナ側に歩み寄るのでしょう。ウクライナ侵攻の解決に向けた協議が始まるのはそれからだと思います。

私が保有するロシア株ETFは資産売却をいつまで待つのか、明示していません。ウクライナ侵攻はいつか解決するのでしょうが、ETF運用会社がそれを待てるのかどうかは分からないため、なるべく早い解決し、西側投資家による証券売買が再開されることを望んでいます。今後もウクライナ情勢から目が離せない状態が続きます。

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放置される確定拠出年金にご用心

受け取り先が不明な多額の確定拠出年金が放置されているそうです。その額は111万人分の2400億円とのこと。転職や退職時に必要な手続きを忘れた結果、振込先が分からずに放置されることになるそうです。一人あたりの額は2400億円÷111万=約22万円ということで、ものすごく多額というわけではない(このため手続きを忘れるのでしょう)ですが、かといって無視するにはもったいない金額です。

なぜこのようなことが起こるのか調べてみました。確定拠出年金を提供している企業に務めている人が退職する際、それまで積み立てた確定拠出年金は、次の勤務先で確定拠出年金がある場合は次の企業に移管、そうでない場合はイデコに移管することになるようです。そして今回問題になった人は、どちらの手続きもしていなかった人のようです。

そして手続きをしなかった人の確定拠出年金国民年金基金連合会に自動移管されることになります。その際に運用資金は現金になり、その後は手数料だけが引き落とされることになるそうです。運用は行われずに手数料だけかかるということで、少しずつ資金が減っていくことになります。また確定拠出年金は加入期間が10年ないと60歳以降の受け取りが難しいそうで、その点からも不利になってしまうことがあるとのことでした。

このように整理していくと自動移管という手続き自体に改善の余地があるような気がしますが、現実に手続きをしない人がいるであろう(次の勤務先に確定拠出年金がない人は自身でイデコ口座を作るのことになるのでしょうが、それが面倒という人は結構いそうです)ことを考えると、自動移管は必要悪な手続きであるように思います。

私が読んだ記事では心当たりがある人に国民年金基金連合会に照会するように呼びかけていました。この記事の読者で確定拠出年金を導入していた企業に務めた記憶がある方は、ご自身の確定拠出年金がどうなったか思い返してみてはいかがでしょうか。

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中国と新興国株に対する悲観論を確認する

新興国株式は追加投資の有力候補の一つになっています。新興国株の約1/3は中国株で占められており、また台湾など中国の影響を強く受ける国の株式も多く含まれることから、新興国株への投資を検討する際は中国に対する自身の見解を整理する必要があると考えています。「自身が前のめりになっている時ほど反対意見を確認すべし」というわけで、直近の中国悲観論について調べてみました。

中国では不動産危機、経済成長鈍化、規制リスク(共産党の企業に対する影響力)、ゼロコロナ政策、電力不足といったマイナス材料が挙げられています。ゼロコロナ政策は時間が経てば解消されるでしょうから、長期的に心配する必要があるのは不動産危機と規制リスクだと思います。このうち不動産危機は中国悲観論が語られる際に常に指摘されており、オオカミ少年ではありませんが本当に来るのか半信半疑なところがあります。日本人は不動産バブル崩壊の記憶があり、このリスクを過大視する傾向があるように思いますが、ただ本当に顕在化するとその影響は大きいでしょう。規制リスクは10月に開催される5年に一度の党大会で何らかの方向性が打ち出されるのでは、という考え方もあるようです。

このようなマイナス材料がある一方、利下げ等の景気刺激策というプラス材料もあります。マイナス材料として挙げたゼロコロナ政策や電力不足も含め、対処方法が明確な問題は、中央に権力が集中しトップダウン判断で物事が進みやすい中国が取り組みやすい問題であり、この点はは引き続き中国の強みのように思えます。

また新興国株全体に対する悲観論としては中国に対する懸念の他、米国の金融引き締めや欧州のエネルギー危機等でリスク資産への投資が回避されていることが指摘されていました。リスク資産への投資が回避されているのは一時的な問題だと思いますので、新興国株への投資判断はやはり中国に対する考え方次第ということになります。

足元の市場の動きを見ると新興国株は定位安定しており、6月中旬以降の株価の反発にも反応していません。先進国対比で割安に放置されているように見えることは魅力的であるように思いますが、今回の記事で指摘したような長期的なマイナス材料を考えると割安放置にはそれなりの理由がありそうな気がしてきました。FRB高官の引き締め継続発言を受け、先進国株がしっかりと調整しそうであること、またすでに新興国株へはそれなりに投資していることを考えると、次回株価が割安になった時の追加投資先は先進国株を多く含んだ全世界株で良い気がしてきました。株価が本格的に調整するまでにはまだまだ時間的な余裕がありそうですので、もう少し悩んでみたいと思います。

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中央銀行家としての気概を示したECBラガルド総裁

伝統的な中央銀行の役割を超えた施策を求める世論に対し、ECBのラガルド総裁が中央銀行の役割を再整理する発言を繰り返しました。

1つ目はEU各国で検討されている物価上昇対策(生活支援等の財政政策)に対し、現在ECBが取り組んでいる物価抑制の妨げにならないようにすることを求めました。中央銀行であるECBが金融引き締めを行っても、政府の財政支出を通じて現金が出回れば、金融引き締めの効果は減ってしまいます。言っていることは極めて真っ当だと思います。

2つ目はECBは銀行に対して流動性を供給することは可能だが、エネルギー会社に対して流動性を供給することはECBの仕事ではない(それは政府の仕事と位置づけています)ことを言明したことです。中央銀行は金融システムの安定に責任を負うとされており、銀行に流動性を供給することは可能だが、エネルギー会社に対してはそうではないということです。ECBの役割は物価の安定と雇用の創出とのことで、物価の安定を拡大解釈することでエネルギー会社に流動性を供給することも可能かもしれません。おそらくエネルギー会社を援助する圧力はかかっていたと思いますが、それを否定した形です。

私はラガルド総裁に対し、政治任用で総裁に就任した政治への配慮に長けた人物なのではないか、と思っていました。中央銀行の中でもECBの総裁はEU各国の利害を調整する政治的な能力が求められるわけで、適材適所と言えなくもないですが、その分だけ金融政策に対するこだわりのようなものに欠けるように思い込んでいたわけです。今回の発言を通じ、政治的に不評であろうこともしっかりと発言する、気骨を感じることができました。

ひるがえって思うのが日銀の金融政策です。日銀は政府と一体となった金融政策を行っており、これは正しいことだと思いますが、一方で政府の言いなりになっているようにも見えます。そうした金融政策を続けていくと、いつかは円に対する信認の低下という形で代償を支払うことになると思いますが、一体どうなるのでしょうか。

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正当化可能な物価高対策とは?

物価上昇対策が世界中で検討されており、日本でもガソリン補助金や給付金等の措置が検討されています。小さい政府を信奉する私は、こうした対策は本当に困窮している人・企業に絞られるべきで、また既存の生活保護のような制度(生活保護という仕組みに運用上の改善点があることは認識していますが)を活用することで、困窮している人に対する援助は可能と考えています。

このように考えている私ですが、この対策は確かに必要だろうと思える対策が記事で紹介されていました。エネルギー取引において、価格変動の拡大に起因した巨額の追い証が発生しており、これを政府が一時的に肩代わりすることが考えてられているそうです。追い証を払う必要があるのは主に電力・ガス会社で、記事では明確になっていませんでしたが、エネルギーのデリバティブ市場で事業運用のためのリスク管理を行っているようです。

業務上取らなければいけないポジションから発生する追い証を電力・ガス会社で負担する場合、追い証が過大になった時に電力・ガス会社はポジションを縮小するために事業を縮小せざるを得なくなります。これは電力やガスの供給を減らすことにつながるでしょうから、サービスを受ける住民は多大な影響を被ることになります。
追い証が発生するくらいならデリバティブ市場でのリスク管理など止めてしまえば良いという意見があるかもしれませんが、その場合に電力・ガス会社の事業リスクはとてつもなく大きくなります。そしてエネルギー価格が電力・ガス会社によって損が出る方向に動いた場合、会社が破綻するようなことになるかもしれません。

本来であれば電力・ガス会社が追い証負担に耐えうるだけの資本を蓄積していれば良いかもしれませんが、社会全体の資本効率を考えるとそれは効率的でないでしょう。また追い証負担に耐えきれずに電力・ガス会社が破綻した場合、業務を引き継ぐ会社が現れるのでしょうが、それまでの間に混乱の影響を受けるのは住民です。今回の追い証発生が電力・ガス会社の経営判断の誤りに起因するものでなく、リスク管理の必要性や追い証という社会の仕組みとしてどうしても発生するのであれば、それを政府が負担するのは合理的です。

追い証発生の原因であるエネルギー価格変動の拡大は(おそらく)一時的なものでしょうから、一時的な対処として追い証を政府が負担し、価格変動が落ち着いた後に返還させることになります。このくらいの負担であれば小さな政府の信奉者を含めた納税者を納得させることができるように思います。

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米国の労働者の半数が仕事に対する熱意を失っているらしい

米国の労働者の半数以上が仕事に対する勤労意欲を失っているというアンケート結果が出てきました。最近「静かな退職者」という、会社に属しながらも仕事に対する熱意を失っている人を指す言葉が流行っていましたが、今回の調査では米国の労働者の半数以上が「静かな退職者」に該当するそうです。

「静かな退職者」が増えている背景にはコロナ禍で在宅勤務が増えたことがあるのだと思います。在宅勤務で日常業務がこなせるのであれば、通勤時間や狭い場所で働くストレスを避けたがるのは自然な選択です。

このアンケート結果を伝える記事では、勤労意欲を失った労働者の多くはその理由として、自身の仕事が評価されていないことを指摘しているそうです。家庭内には仕事と同様にするべきことが多くあり、家事と仕事のどちらを優先するのかは労働者に委ねられています。また家事は時間をかければかけるほど、確実に日々の生活が良くなります。積極的に追加的な仕事をしたにも関わらず、それが報われないのであれば、仕事よりも家事を優先する人が現れても不思議ではありません。

このような風潮の中、米国ウォール街の金融機関は労働者を職場に復帰させることに熱心なそうです。近い将来の景気後退が予想され、人員削減の可能性が高まる中、雇用主の力が戻りつつあることも、金融機関側の動きを後押ししているそうです。

米国では9月が新年度入りの月にあたるようで、今月から新たな職場復帰を促す例も多いそうです。コロナ禍から日常への復帰が労働市場がどのように起こるのか、こちらも要注目です。

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