岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

10/15 チョン・ミョンフン指揮 東京フィルハーモニー交響楽団

2026/10/15(木)19時開演・サントリーホール

 

指揮:チョン・ミョンフン
ヴァイオリン:マキシム・ヴェンゲーロフ
東京フィルハーモニー交響楽団

 

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op. 47
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op. 92

 

毎度のことだが東フィルの定期演奏会はチョンの出演が多く、豪華に感じる(指揮者の希望を取り入れたプログラムにした結果、イマイチな演奏会になることも多い気がするが…)。これはチョンと東フィルの長年の関係性がなせるわざのようだが、将来有望な若手を起用することを将来につなげる手法は、他のオケも参考にしてよいのではないか。東京交響楽団とヴィオッティの関係性もこれに似たところがあると思うが、果たしてヴィオッティはチョンのような存在になっていくのだろうか。

さて、この日の演奏会はソリストにヴェンゲーロフに迎え、そうした意味でもとても豪華だった。まず、ヴェンゲーロフの演奏は素晴らしかった。美音を悠々と響かせた点は、さすがと言える。ただ自分にはヴェンゲーロフとシベリウスの取り合わせが必ずしもベストであったようには思えず、たとえばチャイコフスキーのような王道プログラムの方が良かったように思った。とはいえ東フィル側の希望がヴェンゲーロフに受け入れられるとは限らず、つまらないケチをつける形になったが、素晴らしい演奏であったことに疑いはない。豪華な演奏会を楽しませてくれた東フィルに感謝したい。

後半のベートーベンの7番はクールでドライブ感のある演奏だった。特にスピードの早さが印象的で、その意味ではもう少しオケに歌わせる面があっても良いと思った。ただこれは好みの問題であり、スピード感のある7番が好みという人も一定以上いることだろう。とはいえベートーベンの7番は好きな曲の一つで、チョンはこの曲の良さを引き出していたと思う。

満足度4/5

10/4 イタリアのトルコ人 新国立劇場

2026/10/4(日)14時開演・新国立劇場

 

【指 揮】アレッサンドロ・ボナート
【演出・衣裳】ロラン・ペリー

 

【セリム】アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス
【ドンナ・フィオリッラ】クラウディア・ムスキオ
【ドン・ジェローニオ】パオロ・ボルドーニャ
【ドン・ナルチーゾ】ルジル・ガティン
【詩人プロスドーチモ】ブルーノ・タッディア
【ザイダ】但馬由香
【アルバザール】山本康寛

 

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

 

ロッシーニらしさがあふれた素晴らしい舞台だった。フォトノベルを使ったロラン・ペリーの演出は、元となるあらすじをある程度は踏襲しつつも、新しい切り口を楽しませてくれた。

舞台や設定だけでない。ロッシーニのオペラでは役者にある程度の演技力が求められると思うが、役者としての演技も良かった。これはおそらく演出家の指導による部分も大きかったことだろう。

歌手はフィオリッラ役のムスキオが群を抜いており、コメディエンヌ的な演技をしっかりとこなしつつ、ロッシーニらしさを感じさせる歌唱を提供していた。新国立劇場では深刻な役を演じたこともあるようだが、今回のような役がこの人の当たり役であるように思う。次回はどのような役を演じてくれるのか、とても楽しみだ。ジェローニオ役のボルドーニャの演技も良かった。

音楽の観点ではロッシーニらしさを楽しむことができた。ロッシーニの音楽には深みを感じさせないことが深みにつながるという不思議な魅力があると思うが、指揮者とオーケストラがそうした魅力を引き出していた。また歌手陣も素晴らしい歌唱で、音楽に応えていた。

本作は2026-27年シーズンの開幕作だったが、今シーズンが楽しみになるような、素晴らしいオペラだった。

満足度5/5

9/13 ファビオ・ルイージ指揮 NHK交響楽団

9/13(日)14時開演・NHKホール

 

フランツ・シュミット/オラトリオ「7つの封印の書」

 

指揮 : ファビオ・ルイージ
ヨハネ(テノール) : ミヒャエル・ラウレンツ
神の声(バス) : ダーヴィト・シュテフェンス
ソプラノ : 迫田美帆
メゾ・ソプラノ : 藤井麻美
テノール : 伊藤達人
バス : 加藤宏隆
合唱 : 新国立劇場合唱団

N響の2026/27シーズン開幕はフランツ・シュミットによる聞き慣れない曲だった。自分にとっては今回が初の体験で、あえて予習をせずに会場に向かった。

 

この曲はヨハネの黙示録によるオラトリオで、キリスト教についてあまり知らない自分にとっては、黙示録のおどろおどろしい内容にまずは驚いた。信者をつなぎとめるためにこのような内容になっているのだろう、などと斜に構えた態度で聴いていたせいか、正直なところその内容はあまり頭に入ってこなかった。

 

ルイージに指揮は合唱を含んだ大編成のオケや演奏家たちを上手く束ねており、この曲が持つスケール感を引き出していた。内容はともかく、曲としては良い曲だと思った。とはいえ初の視聴であり、相対的な良し悪しについてはよく分からない。

 

同時期に東京交響楽団がこの曲を演奏したことが話題になった。この曲が選ばれた理由として先行きの不透明感が挙げられているが、先行きの不透明感は今日急に高まったわけではないように思う。なんとも釈然としないシーズン開幕となった。

 

満足度2/5

9/8 ユライ・ヴァルチュハ指揮 読売日本交響楽団

 

2026年9月8日(火) 19:00開演・サントリーホール


マーラー:交響曲第6番 イ短調 「悲劇的」

 

指揮:ユライ・ヴァルチュハ
読売日本交響楽団

 

1月に聴いたソヒエフ指揮・N響の演奏が素晴らしく(当時のブログを読み返すと満足度は4になっているが…)、期待してサントリーホールに向かった。結果としてマーラーを聴くことはできたものの、この曲が持つダイナミズムやスケール感を感じることはできなかった。

 

1月に感じたこの曲に内包されたマーラーの狂気のようなものは、感じることができなかったということだが、指揮者の意図がこの曲の構造的なものを示したいということなら、その目的はかなったのだろう。チラシに記載されていた事前のインタビューで、ヴァルチュハは弱音の重要性を強調しており、そうした「こだわり」は感じ取れたような気がする。

 

1月の記事に記載した通り、自分はマーラーやブルックナーといったオーケストラファンに人気のある作曲家の作品にあまり触れずに、これまで過ごしてきたので、こうした指揮者による違いはいまいち理解できていない。ただマーラーについては少しずつ、耳が慣れてきたところだ。今後の自身の変化も楽しみの一つになっている。

 

満足度3/5

 

 

1/18 ソヒエフ指揮 NHK交響楽団 - 岸辺の日記

9/4(金) 大野和士指揮 東京都交響楽団 シモン・トルプチェスキ

9/4(金)19時開演・サントリーホール

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op. 30
R. シュトラウス:交響詩『ドン・キホーテ』 Op. 35

 

指揮:大野和士
ピアノ:シモン・トルプチェスキ
チェロ:伊東裕
ヴィオラ:篠﨑友美
東京都交響楽団

 

秋のコンサートシーズンの開始となるコンサートだったが、結果としてあまり満足できなかった。

 

もっとも楽しみにしていたラフマニノフは、テンポが早すぎてラフマニノフの特徴であるロマンティシズムやダイナミズムを欠いた演奏になっていたように思う。トルプチェスキのピアニストとしての技量は十二分に理解できたが、その技量は曲に合わせて引き出されるべきだろう。大野もこうした点を感じていたと思うが、協奏曲におけるオケとソリストの関係性は普段どうなっているのだろうか。普段の大野のスタイルを考えると、おそらく今回はトルプチェスキ主導で決まったのではないか等、いろいろ考えさせられた。

 

後半のシュトラウスは前半を引きずってしまい、あまり楽しめなかった。標題音楽は交響曲と違って構造が把握しにくく、このため自分自身が迷子になってしまう面があるように思う。これは単純に予習不足である可能性もあるので、次回は予習をしっかりして、コンサートに臨みたい。

 

満足度2/5

7/23(木) チョン・ミョンフン指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 カルメン(演奏会形式)

2026年7月23日(木) 19:00開演・サントリーホール

 

ビゼー:オペラ『カルメン』(演奏会形式)

 

指揮:チョン・ミョンフン
カルメン:ステファニー・ドゥストラック
ドン・ホセ:マシュー・ポレンザーニ
エスカミーリョ:アンドリー・キマチ
ミカエラ:スラーフカ・ザーメチニーコヴァー

 

東フィルの年間券を買った時に一番楽しみにしていた公演だったが、結果的に期待に違わぬ素晴らしい夜になった。

 

主要キャストは直近までスカラ座で出演していた面々とのことで、声楽面ではいずれもハイレベルだった。カルメン役のドゥストラックは、事前のインタビューでフランス語の発音を意識して聴いて欲しいと語っていたが、たしかにフランス語らしさを感じることができた。またホセ役とミカエラ役も好演技かつ良い声が出ていた。日本人キャストでは砂田愛梨が良かった。

 

演奏会形式のオペラは自分にとってこの日が初めてで、どのようなものかにも興味があった。演奏会形式と言っても歌手は芝居をしながら歌っていたが、その演技は伝統的なコンセプトに基づくものであり、その点は面白いとは言えなかった。ただ舞台装置がない中でレジーシアター的に攻めた演技をしても観客に伝わらない可能性が高いので、これは致し方ないと思う。

 

チョン・ミョンフンの指揮はスカラ座での公演後だけに手慣れたもので、楽譜なしで飄々と指揮していた。この脱力スタイルは長年にわたるオケとの信頼関係があってこそだと思うが、スカラ座でも同様だったのかは少し気になった。

 

これだけ豪華な演奏会を毎回続けると東フィルは財政的に破綻間違いなしだろうが、開催費用に見合った素晴らしい演奏会だった。これが来年も含まれる限り、来年も年間券は継続だと思った。

 

なお、自分が座った席の近辺でビニール袋が発する音が出たり、スタンディングオベーションをめぐるいざこざが起こったことは、とても残念だった。ビニール袋は少なくとも剥き出しの形で座席にもちこむべきでないし、スタンディングオベーションに反対する理屈が自分にはよく分からない。スマホで写真が撮りたかったのかもしれないが、その場合はカーテンコールの初期の段階で、手早く撮っておくべきだろう。

 

5/5

7/5(日) エレクトラ 新国立劇場

2026/7/5(日)14時開演・新国立劇場

 

【指 揮】大野和士
【演 出】ヨハネス・エラート

 

【クリテムネストラ】藤村実穂子
【エレクトラ】アイレ・アッソーニ
【クリソテミス】ヘドヴィグ・ハウゲルド
【エギスト】工藤和真
【オレスト】エギルス・シリンス

 

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

 

予算をかけた新制作のオペラということで、新国立劇場も力を入れて広報活動を行っていたようだ。そうした事前情報に接してとても楽しみにしていたが、期待にたがわぬ素晴らしいオペラだった。

まず歌手陣だが、エレクトラ役のアッソーニが素晴らしかった。最終盤こそやや息切れしたように感じた(聴く側が誤解している可能性が高い)が、長丁場のオペラをしっかりと歌いきっていた。特に感心したのが声量のコントロールで、ピアニストからフォルテシモへの転換が見事だった。クリテムネストラ役の藤村(本質的なことではないが、藤村は細い体からよくあれだけの声が出るものだと、いつも感心する)やクリソテミス役のハウゲルドも、演技を含め、役割をしっかりと果たしていた。

今回もっとも素晴らしかったのが演出で、エラートが従来とは少し異なる解釈を、見事に舞台に反映していた。従来と異なると言っても原典から逸脱したものでなく、根拠はしっかりとテキストに記載されている。また役者の細かい演技にも背景があるはずであり、それらについて考えることも楽しいことだ。

エラートが提示した論点についてあれこれ考えながら、帰路についた。新国立劇場にはこうした現代的な演出のオペラをもっと多く上演するよう期待したい。

満足度5/5