岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

中央銀行家としての気概を示したECBラガルド総裁

伝統的な中央銀行の役割を超えた施策を求める世論に対し、ECBのラガルド総裁が中央銀行の役割を再整理する発言を繰り返しました。

1つ目はEU各国で検討されている物価上昇対策(生活支援等の財政政策)に対し、現在ECBが取り組んでいる物価抑制の妨げにならないようにすることを求めました。中央銀行であるECBが金融引き締めを行っても、政府の財政支出を通じて現金が出回れば、金融引き締めの効果は減ってしまいます。言っていることは極めて真っ当だと思います。

2つ目はECBは銀行に対して流動性を供給することは可能だが、エネルギー会社に対して流動性を供給することはECBの仕事ではない(それは政府の仕事と位置づけています)ことを言明したことです。中央銀行は金融システムの安定に責任を負うとされており、銀行に流動性を供給することは可能だが、エネルギー会社に対してはそうではないということです。ECBの役割は物価の安定と雇用の創出とのことで、物価の安定を拡大解釈することでエネルギー会社に流動性を供給することも可能かもしれません。おそらくエネルギー会社を援助する圧力はかかっていたと思いますが、それを否定した形です。

私はラガルド総裁に対し、政治任用で総裁に就任した政治への配慮に長けた人物なのではないか、と思っていました。中央銀行の中でもECBの総裁はEU各国の利害を調整する政治的な能力が求められるわけで、適材適所と言えなくもないですが、その分だけ金融政策に対するこだわりのようなものに欠けるように思い込んでいたわけです。今回の発言を通じ、政治的に不評であろうこともしっかりと発言する、気骨を感じることができました。

ひるがえって思うのが日銀の金融政策です。日銀は政府と一体となった金融政策を行っており、これは正しいことだと思いますが、一方で政府の言いなりになっているようにも見えます。そうした金融政策を続けていくと、いつかは円に対する信認の低下という形で代償を支払うことになると思いますが、一体どうなるのでしょうか。

reedonshore.hatenablog.com