岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

再び新興国の時代が来るのか?

中国政府による自国企業への規制等により軟調な展開が続いている新興国株式ですが、今後は先進国株式よりも高いリターンが見込めるのではないかとする記事を読みました。直近10年間は好調な米国株式に牽引されて先進国株式が新興国株式を上回っていましたが、その傾向もそろそろ終了するのでは、ということです。

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そうした意見の背景は、ワクチン接種の進捗によって経済回復がより加速する、先進国株式に出遅れた分だけ割安になっており割安修正の動きが期待できる、といったものです。また経済回復が順調に進み、米国等で計画されているインフラ投資等によって物不足に拍車がかかると、資源国の割合が相対的に大きい新興国株式に優位な展開となるとのことでした。

記事の中で紹介されている新興国株式見直しの要因(ワクチン接種や相対的な割安感)はなるほどと思わせるものがある一方で、経済回復が順調に進んでいくことが大前提になっていることや、昨今懸念されている中国経済についての分析が十分でないようにも思います。この記事に限ったことではないですが、何でも鵜呑みにすることは禁物です。特に中国経済の今後については、中国株式は新興国株式市場の1/3超を占める巨大市場であるだけに、要注目と考えています。

ともあれ私も注目していた新興国株式に、同じような見方をしている専門家がいることは頼もしい気がしています。だいぶ昔の話になりますが、振り返ると2000年代は新興国株式が注目され、新興国株式を上回る実績をあげていました。新興国株式の動向は今後も注目していきたいと思います。

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パウエル議長はマエストロか、それもと市場の応援団か。そして最終的にエコノミストが正しいのか?

世界最大規模の債券運用会社を率いたモハメド・エラリアン氏がパウエル議長の政策運営に対して疑問を投げかけるコラムを読みました。先日お伝えしたようにパウエル議長の対応は市場のことを慮った名タクトだったと私は思うのですが、エラリアン氏はこの対応は市場参加者にとっては良かったかもしれない(このためパウエル議長を”市場の応援団”と表現)が、インフレリスクの放置を通じて将来に重大な禍根を残すのではないか、と考えています。私とエラリアン氏の洞察力の差は言うまでもないわけで、大いに傾聴すべきだと思います。

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様々な意見を確認しているとベテランの市場参加者ほど、現在の超緩和的な金融政策に対して、懸念する傾向があるように思います。こうした意見に反対する代表的な考え方は「いつでも引き締めに転じることが可能である」だと思いますが、ベテランはそんなことは百も承知なはずです。引き締めに転じたとしても取り返しのつかない事態となっていると考えているのでしょう。
またこのコラムの中でも言及されていますが、パウエル議長の政策に疑問を投げかけるのはエコノミストが多いように思います。伝統的な経済の仕組みに慣れ親しんだ人の目に、現在の政策運営はやり過ぎと映るのでしょう。

良いか悪いかは別にしてFRB以上に先端的な金融政策に取り組んでいる日本に住む私としては、日本をモニターすることで本当にマズイ事態は回避できる、米国はまだまだ緩和することが可能であると思います。ただし人口動態や貿易赤字など前提条件が異なる国の間で、単純に中央銀行の資産(当然、GDP調整はします)を比較しても、意味がないのかもしれません。

金融政策は市場の中で様々な意見が飛び交う中で醸成されていくものだと思います。私は引き続きパウエル議長応援団の一員ですが、エラリアン氏のようなベテランやエコノミストが最終的に正しいのか、その場合にパウエル議長はどう軌道修正するのか、注目していきたいと思っています。

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中国経済に関するメモ②。中国のことだけを考えていれば良いわけではなさそう…

一昨日に続いて中国経済に関するメモを記録していきます。現在中国で起こっていることは、改革開放に匹敵するほどの大転換になる可能性があり、要注目だと思っています。

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私の読んだある記事では「共同富裕」という新たなスローガンが対象とする人々は超富裕層だけでなく、一般的に裕福とされる人々も含まれるのではないか、と推察されていました。記事では上位20%の所得が、下位20%の所得の10倍近くになっていることが指摘されていましたが、仮に上位20%に対して大きな課税負担を課すとなると、そのことが社会全体に及ぼす影響は大きいように思われます。
一握りの超富裕層だけでなく上位20%まで対象を広げると、上位層が課税負担に苦しんでいる様が社会全体で可視化され、健全な上昇志向に悪い影響を与えるような気がします。改革開放によって計画経済にありがちな非生産性から脱した中国ですが、再び逆戻りしてしまうのでしょうか。

また経済政策を策定するにあたり、より長期的な見方を重視する「跨周期(クロスシクリカル)」という考え方の導入が見込まれているそうです。伝統的な経済政策は景気が良いときは引き締め、景気が悪くなった時に(引き締めていた分を)緩和する方法で運営されてきたわけですが、「跨周期」という考え方では規模の小さな緩和を永続的に行うことになります。
経済について学び始めた際、緩和と引き締めを繰り返すのではなく、もっと静的な政策運営の方が良いように思った記憶があります。ただそうした選択肢を選んでこなかったのは、たとえ小さいものでも緩和が継続されるとバブルが発生しやすいという反省に拠るものではないかと考えています。

跨周期という考え方は中国だけでなく。主要先進国でも採用されている(ただし現在はその規模が小さくありません)考え方だと思います。こうした政策転換によって世界的に緩和一辺倒となった先には何があるのでしょうか。
数十年にわたって金利は低下基調で推移してきましたが、さすがに上昇に転じる兆しも感じられます。金利上昇に転じた後、ないしは金利上昇をきっかけに、緩和一辺倒からの脱却を迫られた時、経済に与える影響は中国に限定されるものではないでしょう。

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今回も結果的に名タクトを振ったマエストロ。パウエル議長

注目されていたジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演が終わりました。事前の予想では早すぎる金融引締め(といってもテーパリングですが)によって株式市場が調整するのではないか、逆に現状維持を続けることで物価上昇が管理不能になるのではないか、といった懸念が聞かれましたが、結果的に今回も名タクトを振った形になりました。

講演では年内のテーパリング開始について言及してインフレを放置しないことを明らかにしつつ、一方でテーパリング後に予想されている利上げについてはまだ先であることを明示されており、バランスの良さを感じさせます。株式市場は利上げまでの期間が当初予想よりも長くなる、あるいは懸念されていた早期利上げの懸念が後退したことを受けて、上昇しました。

思い返すと昨年のジャクソンホール会合では今年になってインフレ率が上昇することを予期していたかのような(実際にここまで早いとは思っていなかったでしょうが、ある程度は予期していたように思います)、後になって振り返るとキレッキレの政策判断でした。
今回は将来の不透明感を考慮し、バランスを取ればそういう発表になるだろうなと、ある程度は想定できる内容と言えると思いますが、ただ市場の空気が読めていることは市場参加者に安心感を与えたと思います。

その意味で今回、マエストロ・パウエル議長は手堅いタクトを振ったと言えるのでしょうが、不透明さが残っているからこそ、手堅く振る舞うことが現時点の名タクトと言えるのだと思います。
今後はテーパリングの進捗スピード(資産買い入れ額の減少額)や利上げ開始時期をめぐり、名タクトを振っていただくことを期待したいと思います。

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中国経済に関するメモ①。中国は長期的に衰退するのか?

じっちゃまこと広瀬隆雄さんが中国株式についてツイートされていたのでその大意を記録しておきます。昨今の中国株式市場をめぐり、長期的な視点を提供してくれているように思います。

機関投資家は顧客に対する義務があるため、米国での上場廃止リスクのある中国株ADRには投資しにくい
②西側の企業は中国への人の出入りが難しくなる中、中国への直接投資に内包されるリスクを意識せざるを得ないのではないか
③急拡大した中国の社債市場にはリスクがあるのでは。人民元の為替リスクを機関投資家は十分意識できていたのか
④現在の中国には1980年代の日本と似通った部分があるのでは。不動産を含む資産価格の高騰、ゆとり教育の導入、華美すぎる商品(ルイヴィトンの自転車)の販売
⑤中国政府は格差問題への対処として少数の富裕層から経済的弱者への富の移転を狙っているのではないか。これは中国共産党の初期にも見られた現象
⑥中国は格差問題に先行して取り組んだ日本の後追いをしているのではないか。その結果、中国は日本のようになるのではないか

最近になって中国中央政府が唱え始めた「共同富裕」という考え方は重要な概念であるように思っていましたが、一連のツイートを読むとやはり無視できない動きだなと思いました。

こうした一連のツイッターに対してあるフォロワーが、ブリジストン自転車がセリーヌと組んで1984年に発売した自転車があったことを返信していました。中国が日本のようになるのだとすると、世界経済の牽引役が消えることになるわけで、その影響は甚大です。くわばらくわばら…

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映画「パージ」を見て映画評論について再び考える

映画を見るにあたり、シリーズ化されているものはその第1作はなるべく見ておくことにしています。シリーズ化されているということは何かしら良い点があったはずで、それならば見ておこうというわけです。

「パージ」というこの映画もシリーズ化されていることはぼんやりと頭に入っており、またあらすじを読んでその設定が面白そうなので、見てみました。見終わった感想は『暇つぶし用映画としては面白くてシリーズ化されるのは分かる気がする、ただし心に残るものはあまりないかな』というものでした。そして例によって映画を検索したところ、Wikipedia上に辛口な映画評論が出ていました。

Wikipediaで引用されていた評論をさらに要約すると「陳腐で暴力表現が多い」「表現が工夫されていない」といったものです。
陳腐という部分については、これまでも主張されてきた考え方を誇張して表現しているだけに、たしかに分かる気がしますが、ただこの映画に限って非難されるのは少し気の毒な気がします。「表現が工夫されていない」という点も、逆に言うと分かりやすい表現を徹底したことになり、必ずしも悪いことではないのかな、と思いました。「暴力表現が多い」というのは100%同意しますが、ただ暴力表現は一概に否定すべきものでないように思います。

シリーズ化されているだけに商業的に成功したことは確かであるにも関わらず、評論家の意見が辛口なのは、映画を消費するだけの個人と評論を通じて映画に価値をもたらそうとする評論家の立場の違いなのかもしれません。
評論とは様々な解釈を示して作品に奥行きをもたらすものだと思っています。その意味でこの映画のように分かりやすすぎる映画が乱造されると、評論家にとって活躍の余地が狭まるわけです。子供向けの夏休み映画に対する評論は想像しにくいです。

そうした背景というか私の邪推のみによって辛口の評論になったとは思いませんが、分かりやすい映画は評論家にとって天敵なのだろうなと思いました。以下リンクにあるように、作り手の思いがいろいろなところに含まれている映画では、評論はとてもありがたいのですが…

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ワクチン2回目を打ってきました!

ワクチン1回目からおよそ3週間が経ち、2回目のワクチンを打ってきました。2回目は1回目よりも副反応が出やすいという話でしたが、私の場合は特に激しい副反応はありませんでした。ただ確かに1回目よりも筋肉痛が出始めるタイミングが早く、また前回は出なかった微熱が出たように感じました。

ワクチンの効力については、時間が経過すると効きが悪くなるとか、デルタ株には効きにくいとか、いろいろと言われています。ただ、元々気休めに過ぎないと思っていたので、効力について否定的なニュースが報じられていても、打とうという意思に変化はありませんでした。またそうした否定的なニュースが出ている中でも、ワクチンを打っておくと感染時の症状の出方が軽く済むことは確からしいので、この点が大きなメリットだと思います。私の年代ではそもそも重症化の確率は低いらしいですが、その低い確率をさらに下げることができたということになります。

思い返すとワクチン開発には数年単位の期間を要するとされていて、それまでの間の生活や経済はどうなるのか、悲観的な予想が多かったと思います。そんな中、ワクチン開発成功の一報が届いた時の高揚感は今でも覚えています。今回のワクチンは新技術の賜物ということですが、人類の進歩とはありがたいものです。

個人的には今回のワクチン2回目で新型コロナ対策はこれで一段落だと思っており、この後はできる範囲でコロナ前の生活へ戻していきたいと思っています。やろうと思っていたあれこれに取り組もうということで、とても楽しみにしています。

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