岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

マエストロ!パウエル議長の巧みなタクトさばき

注目されていたFOMCですが、FRBはインフレ率の高まりに留意していること、テーパリングと金融引締めの早期化の可能性があることを、金融市場に伝えるものになりました。経済再開による経済の加熱が高インフレを引き起こし、最悪のシナリオとして当局が制御しきれなくなることが一部で懸念されていましたが、そうした懸念はひとまず落ち着いたように思います。

また、こうした現状認識が金融市場に伝えられた際、性急な金融政策の転換を嫌気して株式市場が大きく下落することも懸念されていましたが、同時に発表された金利予想は市場の見方に概ね一致したもので、このため株式市場の反応も落ち着いたものでした(とはいえ債券・為替市場は新しい材料を織り込んだ結果、株式市場よりは動きました)。
政策スタンスを「インフレ心配ない」から「インフレに注意している」と切り替えつつ、当面の政策目標は現状維持であることを、同時にしっかりと伝えたことが大きかったように思います。会議出席者の予想値を示すドットチャートという仕組みも、考えてみるとうまく出来た仕組みです。

今回のFOMCはパウエル議長の就任以来、最も難しい会合になると評していた人もいたくらいですが、金融市場とのコミュニケーションの取り方を含め、素晴らしい出来だったのではないでしょうか。1980年代後半から20年にわたってFRB議長を務めたグリーンスパン氏はその政策運営手腕から「マエストロ」と呼ばれましたが、そのグリーンスパン氏を彷彿とさせるようなタクトさばきだったと思います(難解さが少ないぶん、グリーンスパン氏以上かも?)。

個人的にFOMCをきっかけに株式市場が大きく下がってくれないかと思っていたのですが、世界全体にとっては良いことです。金融政策をめぐる次の大きなイベントは8月下旬のジャクソンホール会合、ここでのパウエル議長によるタクトさばきにも注目です。