岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

米国での自由すぎるETF設定の背景は、社会の風潮か、市場の深みか

米国でユニークなETFが設定されたことが金融関係の記事になることがあります。

昨年で言うと、米議員が開示する証券保有状況に則って投資するETF(政治家はインサイダー情報とは言わないものの、特別な情報に接しており、投資に優位という理屈に基づく。民主党共和党と党ごとに設定されている)、ジム・クレイマーの推奨の逆に投資するETF(ジム・クレイマー氏は投資番組の人気司会者で、その推奨内容が大きくハズレることもよくあるとされる)、ESGに逆行した議決権行使を行うETF(事業遂行と無関係な社会・政治的な課題を推進させる取締役メンバーに反対票を投じる)が設定されたことが印象的でした。日本でも特定業界やテーマに基づく投資信託ETFはありますが、ここまでの自由さはないと思います※1。

こうした記事を読んだ時に思うことは、まずは着眼点の面白さですが、続いてこうしたETFがなぜ次々と設定されるのかについて考えてしまいます。ETFの設定には証券取引所を含めた様々な関係者との調整が必要と思われ、それらの調整を経た戦略がETFとして設定されているはずです。こうしたETFの設定には変わったアイデアを許容する社会の風潮が必要と思われます。

そしてETFとして設定された後、投資家の資金が集まることも必要になります。これは先ほどの社会の風潮以上にETFを設定する運用会社にとって大事な問題です。せっかくETFを立ち上げても、資金が集まらないと運用会社は収益をあげることはできません。こうしたETFへ投資するのは主に個人投資家だと思いますが、個人投資家にとって主な投資対象はS&P500に連動させるような王道なETFであるはずで、米国市場の投資家の多様性がこうしたETFの設定を可能にしているのでしょう。

私自身が現時点でこうしたETFに投資したいわけではありませんが、投資対象・選択肢の豊富さは米国の金融市場の魅力であり、この点は米国が世界でも突出している点だと思います。私がわざわざ米ドルを使って米国市場で投資する理由の一つはここにあります※2。

※1ジム・クレイマー氏はともかく、政治不信を呼び起こすようなETFを設定して大丈夫なのでしょうか…
※2とはいえ日本国内の証券会社が日本国内への提供を決めたETFしか投資できず、投資対象はかなり限られます

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中国のコロナ関連の死者は本当は90万人近い?統計の正しさは重要です

昨日、中国のコロナ関連の統計を元にした記事を作成しました。この記事では中国の統計に対する信頼性を疑問視する意見にも触れましたが、記事にした翌日に早速この統計に疑問を呈する意見が出ていました。

昨日の記事は中国がコロナ関連の死者と認めた5万人の病歴や平均年齢を紹介するものでしたが、5万人という死者数は少なすぎであり、本当は90万人にのぼる可能性があるとした試算が出ているそうです。5万人という死者数は人口あたりの感染者数として他国を大きく下回っているそうで、90万人という数値が正しいのかどうかは別にして、言われてみると5万人という数字はたしかに小さいような気もします。

このように5万人という統計に疑念がつくと、5万人の属性に基づいた分析が正しいのかについても疑問がわいてしまいます。昨日記事にしたように中国の公式発表はゼロコロナからの転換を強く支持する内容であっただけに、統計そのものが恣意的である可能性が出てきてしまいます。

私は人が行うことに無謬性を求めるのは間違いで、ある程度は間違いの発生を前提にして物事を考えるべきと思っています。ただ今回のように桁の違う間違いが発生している場合、統計そのものに加え、統計から導き出される解釈に対する信頼性を揺るがせてしまいます。昨日の記事については取り急ぎ訂正ないし注書きを入れておくことにします。

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【訂正あり】中国でコロナ関連で亡くなった人の平均年齢は80歳と、同国の平均寿命78歳を上回る

※本記事の作成後、記事内で紹介されている統計に対する疑念が提起され、私もその疑念に一定の合理性があるように思います。記録としてこの記事は残しておきますが、訂正を伝える記事も合わせてご一読ください

 

ゼロコロナ政策の撤回を急速に進めた中国では感染者が急増して混乱に陥っていると言われていました。公式統計ではコロナ関連の死者数が少なく発表されており、統計の信頼性を疑問視されていましたが、中国当局が新たにコロナ関連で5万人が亡くなったとする統計を発表しました。

新たな発表によると死者の9割近くが他の病気を併発しており、死者の平均年齢は80歳だったそうです。私がネット検索で調べた中国の平均寿命は78歳でしたので、コロナ関連で亡くなった人は平均寿命よりも長生きしていることになります(平均寿命は0歳の人の平均余命なので、正確な比較ではないのですが…)。
中国の統計についてはコロナ以前から懐疑的な見方が多く、今回の統計を額面通りに受け取ることは難しいかもしれませんが、今回の統計が正しいのだとすると、コロナに特別な対応は必要なくなっているのかもしれません。

日本のコロナ対策はコロナとの共存を前提としたものに移行していると聞きます。私はこの方針転換に賛成ですが、さらに踏み込んで、方針転換を積極的に発信していく動きがあっても良いように思っています。

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いつまで下落を待つのか。年始から好調な株式市場、NISA枠はクレジット債を買っておくか…

本ブログでたびたび記事にしているように私は昨年からの下落局面はまだ終了しておらず、今後昨年10月に記録した下値を下回る展開を期待しています。下値を更新した時に株式へ追加投資しようという、(自らに都合の良い)ある意味で楽観的な見方ですが、これは景気後退による企業業績の悪化を現在の市場は織り込んでいないように思えるためです。

とはいえ昨年10月に広がっていたような、物価上昇がコントロール不能になる状況は脱しているように見えますし、市場がもっとも恐れていた事態は回避できているのかもしれません。自らの見通しがアテにならないことは日々痛感しているだけに、自身の考えに見切りをつける時期について考えました。

景気後退の影響がもっとも強く企業業績に現れる時期として、市場参加者の多くは今年の4-6月期決算を見越しているという記事を読みました。株式市場は半年くらい先を見越して動くとされていますから、4-6月期決算の悪化を市場が反映し始めるのはまさに今頃ということになります。今のところ今週から発表される昨年10-12月期の決算はあまり良くない内容が予想されているようで、その内容を見て市場が将来に弱気になると、株価は下がってくれるかもしれません。

とはいえ既述の通り現在の株式市場は、インフレの落ち着きやそれを受けたFRBの引き締め姿勢の緩和期待を反映し、楽観的になっています。私が期待するような株価下落は起こらない事態に備えた計画も必要です。

私は配当が非課税となるNISA枠は、配当が支払われる前に投資した方が良いと考えている(気持ちの問題に過ぎないことは理解していますが…)ため、早めに投資したいと考えています。10-12月期決算の内容を受け、期待しているような株価下落が起こりそうにないと思った場合、つまり1月の最終週あたりで、株式に比べて手堅い収益が期待できるクレジット債へ投資することを考えています。通常口座で行われる投資は、4-6月期決算の弱気な数値が織り込まれるのを待つため、もう少し様子見しても良いと思っており、少なくとも2-3月までは待つべきかと思っています。

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ロシア株アップデイト。一日も早い平和実現を望む

私は昨年のロシアのウクライナ侵攻時にロシア株ETFに投資し、その後の経済制裁によってこの投資の回収は不可能になり、現在に至っています。

ETFを運用する会社は数年間はファンドを維持するものの、それまでの間にロシア株の回収が不可能のままであった場合は次なる措置を講じるそうで、(その措置は投資家にとって好ましいものでないはずなので)ロシア株投資家としては戦争が集結し、ロシア株市場が外国人に開放される日が一日も早く実現することを望んでいます。

さて、ロシア株が昨年の世界各国の株式市場の中でもっとも実績が悪いとする記事を読みました。12月中旬に出た記事ですが、ロシア株はドル建てで35%、ルーブル建てで44%下落しているそうです。ウクライナ侵攻により外国人投資家が一斉に資金を引き上げたことから、この下落は当然だろうなと思います。

ただ私が投資を開始した、ウクライナに進行した2022年2月24日からの比較では、見え方がだいぶ変わります。ドル建てで36%の上昇(円安効果を含めると約50%の上昇)、ルーブル建てでは7%の上昇になっています。

こうした上昇の背景として、ウクライナ侵攻時の株式市場の反応が大きすぎたこと、また当初の想定よりもロシア経済が持ちこたえていることが挙げられます。そのロシア経済ですが、戦争と経済制裁の長期化によって疲弊しているとした記事を読むことが増えてきました。

戦争の早期集結により、両国の混乱が収まり、また経済制裁が解除され(それには西側・ウクライナ側に優位な形の集結が必要でしょう)、ひいては私のロシア株が無事に回収されることを望んでいます。

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日本国民の勤労意欲。フランスの定年延長に対する反対運動を受けて

フランスで定年を62歳から64歳に引き上げる案が検討されており、労働組合等はストライキも辞さずと、これらの案に反対しているそうです。フランス政府としては社会制度を維持するために、高齢者の労働参加率をを増やさざるをえないと考えているようです。

この記事を読んだ時に思い出したことは、日本における定年延長がかなりスムーズに実行されたことです。日本の定年は1970年代に55歳から60歳に引き上げられ(これは年金支給開始時の引き上げによって、労働者側が定年延長を要求)、同じように2000年代に60歳から65歳に引き上げられています。60歳から65歳への定年延長がスムーズに実行できた理由として、移行に時間をかけた(2000年の企業に対する努力義務化に始まり、2013年にすべての希望者が65歳まで働くことになりました)ことや少子高齢化により労働力の減少が予想されていたことに加え、そもそも日本の労働者が長く働くことを希望していたことが大きいようです。

私がネット検索したところ、2010年時点で望ましい退職年齢を65歳としている人の割合は38%、70歳としている人の割合も26%となっています。これらの勤労意欲は外国に比べて突出して高いようですが、一方で日本の労働者は会社に対する忠誠心や帰属意識が薄れているという統計を見た記憶もあり、勤労意欲が高い理由はとても興味深いところです。

先ほど引用した統計は2010年のものですが、10年が経過し、またコロナ禍を経て、労働者の勤労意欲は変化しているように思います(この統計の最新版を確認しましたが、同じ質問がなくなっており、直近の結果は確認できませんでした)。現在の社会保障を維持することが難しくなった時、日本社会は労働者に定年ないし労働期間の延長を求めるのでしょうが、その時に労働者がどのように反応するのでしょうか。60歳から65歳への引き上げ時とは異なる反応になるような気がしています。

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ESG投資をめぐって混乱する米国社会

ある事柄の影響力が大きくなるにつれ、それに反対する声が大きくなるのは自然なことです。近年急速に注目を集めるESG投資についても、それに懐疑的な意見は当然出ています。

ただ米国におけるESG反対の動きには、政治的な側面もあるようです。共和党が与党になっている米国の州で、ESGに賛同する金融機関や運用会社を州の取引(州債の発行業務や州の公的年金の運用業務から外すことが考えられるそうです)から外すといった具体的な動きが出ているようで、このことが記事になっていました。

共和党が強い州は、エネルギー企業が州経済を支えていたり、銃規制に反対する人が多いようで、元々ESG投資との相性が悪い地域になると思います。こうした地域がESGに反対することは政治家にとって選挙のためのアピールにつながるため、その是非は置いておいて、政治的な動きの背景は理解できます。

私はESG投資に対し、それを推進することへの社会的な合意形成ができていないように思える点に、危うさを感じていました。例えば今回の共和党が強い米国の州のように、エネルギー企業が地域経済を支えている地域の住民がESG投資へ反対するのは自然なことだと思いますが、それにも関わらずESG投資を推進させる権限はいったい誰にあるのかということです。

政治問題となってしまうことで混乱に拍車がかかるものの、こうした混乱は起こるべきものであり、議論の行方を見守りたいと思っています。

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