岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

中国経済をめぐる言説。共同富裕、金融緩和の継続、統制強化の影響について

中国経済をめぐる複数の記事を読んだので記録しておきます。

共同富裕:「共同富裕」という中国政府の新しいスローガンに対する否定的な考えが記事になっていました。中国国内からのリベラル派と目されるエコノミストが発表した共同富裕を批判する言説です。詳細は紹介されていませんでしたが、共同富裕への取り組みによって市場経済ないし政策が後退すると、中国が再び貧困に陥るのではないか、とのことです。この方は市場経済の導入が、一般の人々(とはいえ中国政府が問題視するように、たしかに一部の人なのでしょうが)に豊かになるチャンスをもたらしたとしているようです。この記事の中にこのエコノミストによる論文へのリンクがあったのですが、リンク先は閲覧不可になっていました。なんらかの制限が課されたのでしょうか…

reedonshore.hatenablog.com

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金融緩和の継続:このように企業への取り締まりが強化されると、長期的には中国政府が目論んでいるような調和的な成長がもたらされるかもしれません(そしてここ数十年、中国政府は驚異的な高成長を実現してきました)が、短期的には経済に悪影響となることが予想されます。そうした短期的な悪影響を、中国政府は金融緩和や財政支出によって下支えするのではないか、との予測がエコノミストによってなされています。中国政府側も短期的な経済へのマイナスは考慮しているでしょうし、また中国の財政状況は相対的に良好であることから、財政支出の余地は先進国対比でまだまだ大きいと言えます。従ってこの着眼点はその通りかもしれないと思いました。

統制強化の影響:中国政府が株式(拒否権のついた種類株)取得や取締役派遣を通じて、私企業への統制を強化していることについて、あのジョージ・ソロス氏が警鐘を鳴らしています。そうした企業へ投資家は投資すべきではないし、米国は中国企業への投資を規制すべきでは、との意見です。投資はお金を増やすために行うもので、その手段が非人道的なものであればさすがに寝覚めが悪い(先日記事にしたように地雷メーカーとか)ものの、中国政府が統制する企業に投資することがそこまで悪いこととも思えません。たしかに中国政府の影響力が強すぎるというガバナンス面での不透明感は意識するべきですが、米国政府による規制というよりは投資家自身が考えて判断すべきかと思いました。

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本日ご紹介した3つの言説のうち、金融緩和の継続は今後米国が金融環境の正常化させる中で対照的であり、面白い視点かと思います。中国への投資資金の流れについては、金融政策の方向性の違い以外にも様々な要因が予想されていましたが、これまで中国に向かっていた資金が、今後は米国に戻ることがあるのでしょうか。注目したいと思います。