アフガニスタンの前線を舞台に、地雷の非人道性を訴える映画です。地雷はその兵器としての効果を高めるため、殺傷能力をわざと落としているとされています。兵士を簡単に殺害するよりも重症を負わせる程度にした方が、負傷した兵士を助けるのに更に労力が必要となる(兵士を介抱し、病院へ搬送する等)ため、敵の損害は大きくなるというわけです。殺傷能力を落とすと言っても手足を失ったりするわけで、仮に命をとりとめたとしたも、その後の人生に多大な影響を及ぼすことになります。この映画ではそうした地雷の残酷さがこれでもかというほど、表現されています。
さて、世間でESG投資が流行る前から地雷等の兵器を製造しているメーカーに対する投資は非倫理的であるとしてご法度とされることが多かったのですが、この映画を見るとその精神がよく理解できます。精神をよく理解したことが前提ですが、純粋に投資として兵器メーカーに対する投資を考えた場合、その投資は高いリターンをもたらすでしょうか?
兵器メーカーへの投資は機関投資家の世界ではご法度とされることもあり、当該銘柄は割安に放置されると思われます。普通の企業の株価がPER20倍で取引されているのに対し、兵器メーカーへの投資はPER10倍で取引されているのだとすると、普通の株式への投資は20年間の投資で元本が回収されるのに対し、兵器メーカーへの投資は10年で元が取れるわけです。機関投資家の投資対象にならない分、短期的な株価上昇余地は限定的と思われますが、非上場株式への投資として考えるのであれば、兵器メーカーへの投資は十分に投資対象となりうるかもしれません。
(なお非上場株式の世界でもESGの考え方は浸透しており、機関投資家の資金が兵器メーカー等に流れることは滅多にないものと思われます)
また兵器メーカーも国防へ貢献しているという意味で、必ずしも否定できないのではないか、と考えることも可能です。仮に悪であるとしても、世の中には必要悪ということもあります。どのような企業であっても社会の役に立たたない会社はないわけです。
このように考えると兵器メーカーへの投資も否定できない気もしますが、とはいえこの映画で表現されているような悲惨さは確実にあります。そうしたことを考えると、やはり兵器メーカーに積極的に投資するのには躊躇してしまいます。この映画を見てそんなことを考えました。