英国では与党・保守党の党首選挙の真っ最中ですが、その有力候補であるトラス氏がポピュリスト的な政策を提言しているようです。私が読んだ記事では個人と法人に対する減税に加え、中央銀行に対してインフレ対策を徹底するためマネーサプライの目標を設定することを示唆したそうです。
減税は政府支出の減少と共に行えば有効だと思いますが、政府支出を維持するのであれば単なるバラマキに終わってしまいます。そして私が認識する範囲では政府支出の抑制を政策として掲げているわけではなさそうです。
また対立候補のスナク氏がインフレ抑制が成功した場合に限って減税するとしているようですが、減税はインフレを助長する方向に働きます。英国は高いインフレ率に悩まされていますから、伝統的な経済学の観点ではスナク氏が正しいように思われます。
そして中央銀行の目標にマネーサプライを加えることに関し、日銀をインフレを抑えている良い例として挙げたようです。これには日本人はみなツッコミを入れると思いますし、実際に英国でも一部のエコノミストは嘲笑しているそうです(多くのエコノミストでなく、一部のエコノミストというのが意外です…)。日銀が異次元緩和を進めているにも関わらずインフレが起こらない理由は謎ですが、ともあれ日銀をお手本にすることが好ましくないのは明らかです。
保守党の党首選挙はトラス氏が優勢であると伝えられていますが、今回記事にした発言だけを見る限り、トラス氏は経済分野に弱い印象です。ただこれらの提言は選挙中の大風呂敷に過ぎず、党首に選出された後に軌道修正するのかもしれません。保守党党首は首相として英国を率いていくことになるだけに、今後トラス氏が党首に選ばれた後、どのような政策を実行していくのか、注目していきます。
