岸辺の日記

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クレディ・スイスのAT1債無価値化をめぐり、スイス当局を提訴する動きあり

クレディ・スイスがUBSに救済合併される際にAT1債と呼ばれる債券の価値が無価値になったことに対し、同債券の保有者がスイス当局を訴えていることが記事になっていました。訴えによると、スイス当局はこの債権の価値をゼロにする権限はなかったとし、全額の弁済を求めているそうです。

全額の弁済が妥当なのかはともかく、企業が破綻する際に真っ先に損失を被るのは株主であり、次いで劣後債保有者、最後に一般的な債券の保有者の順になるはずです。今回の吸収合併で、クレディ・スイスの株主はUBSから(少額とはいえ)株式を受け取っています。AT1債は自己資本に組み入れることが可能な債権ということで、株式と同等のリスクを負っていると解釈できますが、だとしても株主が投資資金の一部を回収し、とAT1債の投資家が全損というのは、たしかに少し不公平な感があります。

AT1債が無価値になることを伝える記事にありましたが、この債券が発行される際の発行条件に、AT1債が無価値になる可能性は記載されていたそうです。またクレディ・スイスの救済にあたり、スイスの納税者に痛みを与える可能性を最小限にしたかったスイス当局の事情は理解できます。ただそうだとしても、株主と債権者の優先劣後の順序が、当局の一存によってひっくり返ってしまうことには違和感を感じています。この訴訟がどのような結論に至るのか、注目しています。

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