岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

それを言っちゃあお終いよ。通貨発行益をあてにする黒田総裁

1万円札に1万円の価値があると考えられているのは、法律が決済時の利用を強制していることに加え、1万円を発行する中央銀行日本銀行に対する信認が大きいと思います。それ故に私達は発行費用が数十円(検索したところ約25円でした)の紙切れを、1万円の価値があると考えているわけです。

少し前のことですが国会で、金利上昇による日銀保有債券に評価損が発生する可能性を問われた際、黒田総裁が通貨発行益について言及したことが記事になっていました。通貨発行益とは数十円の費用で1万円の価値を生み出すことができることを指し、たしかに債券から評価損が発生しても、1万円をたくさん発行すれば日本銀行の損失はなくなるでしょう。
ただ、そうして大量供給された1万円札を私達はこれまで通り1万円の価値があるとありがたがるでしょうか。法律上は1万円の価値があるとされるので、相変わらず利用し続けるのでしょうが、円の価値が下がる、つまり物価が上昇する事態を引き起こすかもしれません。日銀が目標としているような2%程度の物価上昇であれば問題ありませんが、日銀に対する信認が失われたことによる物価上昇がその程度ですむはずがありません。

このため通貨発行益はその存在を認識しつつ、発行益をあてにした金融政策が行われていると解釈されるような発言はご法度であったように思います。それをサラリと発言してしまうところに現在の金融政策の怖さがあると思いました。

なおこの質疑応答の様子がYouTubeに出ていたので見てみました。質問した議員は通貨発行益に対する言及にツッコミを入れることなく次の質問に移ってしまいました。国会の運営上、その場で追加質問するのは難しかったのかもしれませんが、本来ここはツッコミどころです。実のある国会論戦を期待したいものです。

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