岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

議会と政府のオトナな関係。FRB副議長の指名をめぐって

政府の首長(大統領や総理大臣)は行政の長として各行政府に指示を出し、その内容の妥当性を議会が監督するのが、議会制民主主義の本来の仕組みと理解しています。ただし政党政治が一般的になると行政の長とその出身母体である主要政党は同じ立場を取るため、牽制関係がうまく機能しなくなることもあると思います。ここで「主要政党」と書きましたが、日本では議会から総理大臣が選ばれるため、議会の過半数は行政の長と同じ立場を取る与党によって占められ、このため牽制関係はより効きにくいことになる※気がします。

※このため日本の野党がなにかと反対姿勢を取ることは一定の意義があるのかと思いました。認識が間違っていたらご指摘ください

この度、米国のFRB副議長の指名をめぐって議会の牽制関係が働いている好事例がありましたので、記録しておきます。バイデン大統領が副議長候補として指名したラスキン氏が、同大統領の出身母体である民主党の議員の反対を受けて、候補を辞退したそうです。
ラスキン氏は気候変動の問題に熱心であるため、銀行を監督するFRBの要職に就いた場合、銀行のエネルギー業界への融資に影響することを懸念する意見がありました。こうした意見を受けて野党であり、エネルギー業界との親和性が高いと言われる共和党が同氏の就任に反対することは理解できます。ただし大統領の出身母体である民主党の有力議員が同氏の指名に反対するのは意外な気がしました。

大統領は民主党内で一定の影響力を持つでしょうから、大統領による指名に反対することがこの有力議員の民主党内の立場に有利に働くとは思えません。そうした一見不利に見える判断を行う背景には、自身の信念(または自身の選挙区の反応への配慮)があるのだろうと思います。自身の信念であろうと選挙区の反応であろうと、今回の意思決定は議会による行政への牽制関係がうまく機能したことになります。

この議員の選挙区ではエネルギー業界が主要産業であり、エネルギー業界に反対する人物の指名に賛成するわけにいかなかった事情があるようですが、党の方針と逆方向となる自身を取り巻く事情を意思決定に反映できるのは良いことだと思います。日本でも党の方針とは別に意思決定する議員がもっと出てきても良い気がしました(比例代表制で選ばれた議員が党の方針に反対するのは変なことになりますが…)。

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