岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

新たな基準が創られる時の混乱。Liborの切り替えに思う

金融業界で短期金利の指標として長年使われてきたLiborという代表的な指標が撤廃される予定なのですが、その過程で混乱が生じています。この指標は市場参加者によって操作されていたことが分かり、規制当局によって新しい指標への移行が促されているのですが、現在のところ新指標の候補が乱立し、収集がつかなくなっているそうです。

新指標の候補に対し「昔の指標にはあったあの要素がない」といった不満ができており、その不満に答えようとすると複数の指標が乱立し、金融市場の複雑さが増してしまうとののこと。旧来の指標に操作されてしまうという問題があったことは確かですが、かといって明確な問題というほどでもなく、なんだかんだで現在でも算出・利用されているだけに「本当に新しい指標に移行する必要があるのか?」という疑問が出てきてもおかしくありません。

 

このように現在も問題なく使われていて、利用者から大きな不満が出ていないものを切り替えさせる場合、どのような手法が考えられるのでしょうか。思いついたのが、ソフトウェアの切り替えです。新しいソフトへ切り替えない利用者に対し、ソフトウェア会社は一定期間が経過した後のアップデイト停止といった手段を通じ、新しいソフトへの移行を促します。あたらしい商品を作っておいてそこに移行しない利用者は自己責任で、というわけですね。ただしこの場合はソフトウェア会社が代替となる商品を提供し、その商品の質について責任を持っていることが大前提としてあるように思われます。

 

今回の「あの要素がない」という指摘はもっともな指摘であるだけに、この点が解決しない限りは新指標への完全移行は難しいように思われます。一方ですべての機能を目指そうとすると乱立してしまい、代表性が失われ、ひいては市場の複雑さが増してしまうという矛盾は残ります。

元々は業界の改善を目指して言い出されたことが、かえって業界の効率を悪化させてしまう可能性があるというわけで、こうした現実を受けて規制当局がどう対応するのか、興味深いところです。