岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

国民への直接的なバラマキは社会の生産性を向上させるのか

米国の4月の雇用統計が事前予想を下回った(それでも雇用者数は増加し、失業率も低下しています)ことに対し、政府による手厚い失業給付等が、失業者が就職活動を開始することへの妨げになっているのでは、と解釈する意見が出ています。失業給付で十分な金額が受給できるのであれば無理して就職しなくても良くなってしまうわけで、この指摘はある程度は正しいように思います。


このような就職活動に対するマイナス要因が存在する一方、経済再開によって必要な雇用は増加傾向にあるため、人材不足が賃金上昇に結びつく可能性も指摘されています。足元の金融市場ではインフレが警戒されており、賃金上昇はインフレに結びつくことが多いです。インフレを防ぐ観点では手厚い失業給付等は否定的に捉えられることになりますが、一方で企業の生産性という面では肯定的に捉えることができるように思います。賃金上昇が起こると企業側も労働者あたりの生産量を増やすよう努めるはずであり、そうした試みが企業の生産性向上に寄与するわけです。


日本では企業の生産性を上げようとして、企業に株主を重視した経営をするように働きかけたり、労働者の働き方を変えたり、様々な取り組みが行われています。部分的に奏功している取り組みもあるのでしょうが、日本企業の生産性は海外の先進国に比べるとまだまだとされることが多いです。
日本経済の下支えには、数十年にわたって多額の政府支出が行われたわけですが、行政によるトップダウン型ないしは企業を通じた資源配分は非効率であり限界があることが分かってきました。仮に生産性向上が経済成長に結びつくのであれば、アプローチを変えて個人に直接バラマキを行い、賃金上昇を通じた生産性改善によって経済成長を図るのも一手ではないでしょうか。本質的ではありますが、国民への直接のバラマキは政治的に選択しやすい施策でもあります。


国民へ直接的なバラマキを行うのに最も大きな弊害は、日本の財政がすでに危機的な状況になっていることだと思います。バラマキ額が天文学的な額になってしまい、かといって対象を絞り込むと不公平感が出る、このようなジレンマに直面することになるでしょう。私も財政はすでに危機的なので、ここに至ってのバラマキは残念ながら現実的ではないと思います。結論がない話ですが、休日にそんなことを考えました。