岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

ポイズンピルが正当化される条件

新生銀行の買収防衛策に関する記事を通じ、ポイズンピルが正当化される事例が出てきたことを知りました。先日記事にしたようにポイズンピルは株主にとって不利となる(新規株式発行による希薄化や新たな買収提案が出にくくなる)ことが多く、不人気であるわけですが、新生銀行の事例については正当化することも可能とのことです。

記事では正当化される背景として3つが指摘されていました。適用期間が限られていること、買付規模に上限があること、買収後の経営方針が明らかでないことです。ただ私はいずれも理由としてイマイチであるように思います。
適用期限が限られていることはポイズンピルの対象が今回の提案に限られることを意味し、今後の株主提案すべてを排除するものではないということです。ただし一度前例ができるとそれが繰り返される可能性があるため、買収提案がよほど悪いものでない限り(そして新生銀行の経営陣はSBIからの買収提案に対する考え方を「反対」から「中立」に変えており、まったくダメというわけではなさそうです)、成り立たない考え方だと思います。
買収規模に上限があること(今回の事例では48%)はすべての株主を平等に扱っていないという意味では成り立ちうるかもしれませんが、特定株主の売却のみを買い付け対象としていない限り、これも成り立たないと思います。私が記事を通じて知る限り、買い付け対象を特定株主の保有株に限定する話は聞いておりません。
最後の買収後の経営方針が明らかでない点は、それを言い出すと現経営陣の経営方針も明らかでないとも言えるわけで、水掛け論という印象です。

記事の中で、そもそもポイズンピルは買収提案を受けた会社の株主がよりよい条件を引き出すための手段や交渉期間を確保するために考案された、と紹介されています。なるほど既存経営陣の保身のためではなく、株主価値向上のためであればポイズンピルは成り立ちます。ただ以前もご紹介した通り、ポイズンピルの撤回を受けて新生銀行の株価は上昇しており、株式市場は今回のポイズンピルを株主価値向上に結びつくとは考えかなったようです。

買収防衛策をめぐっては新生銀行以外にも様々な案件が話題になっており、今後も見守っていきたいと思います。

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