岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

エネルギー事業に関連したロシアへの制裁で、現実的で賢い対応を取る日本政府と企業

欧米のエネルギー企業がロシア事業から撤退する中、日本政府と企業の対応に注目が集まっています。日本は事業撤退に慎重な姿勢を崩していませんが、私はこれは現実的な賢い対応だと思っています。

欧米企業がロシア事業から撤退する背景は、運転資金や操業ノウハウがロシア側に提供されることを防ぐためと理解しています。ロシア経済はエネルギー産業が支えていると言われますから、事業撤退がロシア経済に与える影響は小さくなさそうです。
そうなのであれば日本政府と企業も同様に事業から撤退すれば良いのかもしれませんが、日本企業の撤退が欧米企業の撤退と同じような影響を与えるかは疑問な気がします。日本企業によるロシアのエネルギー事業に対する貢献に、操業ノウハウは含まれていないと思われるためです。

日本企業が主に担っていること、つまり資本・運転資金・ネットワークの提供は事業立ち上げ時には非常にありがたいですが、無事に事業が立ち上がって産出したエネルギーが現金を生み出すようになると、ありがたみは低下すると思います。操業を担っていない限り、稼働済みプロジェクトからの撤退はロシアに悪影響をもたらすとは思えません。また産出したエネルギーをどう扱うかは経済制裁の枠組みで考えるべきことです。

このため稼働済みの事業権益を他国に売却してもロシアに大きな悪影響を及ぼすとは考えられず、またせっかく収益化した事業権益を売却すること現時点で急いで売却することも得策とは思えません。日本政府は「権益を第三国に売却しても制裁にならない」という立場のようですが、その通りだと思います(なお権益をロシアに売却する場合、現実的に高値での売却は不可能でしょうから、もはや制裁なのか援助なのか分からなくなってしまいます…)。

日本政府や企業のこうした対応は資源に乏しい日本の実情も考慮されたもので、そうした観点でも賢いと思うわけですが、一方でこうした対応が欧米から批難される可能性も高いと思います。日本は欧米と協調する必要がありますので、この点で批難された際は、自国の立場を説明し、納得が得られなかったら渋々安値で権益を手放すことになるのでしょう。渋々売却する未来も見えるような気がしますが、ともあれ自ら進んで権益を売却する必要はないと思っています。

reedonshore.hatenablog.com