岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

オールドエコノミー企業の軽視がインフレの原因だった?

ヘッジファンド創業者のアインホーン氏が一味違った切り口から今回の物価上昇を読み解いています。

企業経営者の仕事は資本配分に関する意思決定をすることと定義されることがあります。株主が自社に求めるリターン(資本コスト)を考慮して資本コストを上回る事業に資本を投資し、そうした事業が見当たらない場合は自社株買いや配当を通じて株主に資本を返還する。これを行うことが経営者の仕事という考え方です。単純化が過ぎる感もありますが、ただ資本配分は企業経営上重要な意思決定であり、真理であるように思います。

企業が割安に評価されていることは資本追加にあたり、(今後の利益成長が見込めない分)現時点で高いリターンを求められていることになります。このため割安企業の資本コストは高いことになります。逆に将来の利益成長が見込める成長企業は、現時点での高いリターンは求められませんので、これらの企業の資本コストは低いことになるでしょう。

さて現在の株式市場を振り返ると、割安に評価されている企業は製造業(金融や製薬もそうですが)が多くなっています。資本コストが高いためこうした企業の経営者は自社事業に対する追加投資が難しくなり、結果過小資本になって生産量が減少することになるはずで、これが現在のインフレを招いているのではないか、というのがアインホーン氏の説です。

ここ10年以上の間、IT企業がもてはやされたので、この分析は直感的によく理解できます。ただこの考え方に基づくと、足元で発生しているインフレによってこうした製造業の割安さが解消された場合(価格転嫁によって製造業の収益性が急回復することも考えられます)、経営者は再び自社事業に追加投資を行うでしょう。したがって過小資本は早期に解消されるかもしれず、その場合にこの考え方があてはまるのはあくまで短期なのかもしれません。ともあれ非常に面白い分析でした。

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