岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

市場の価格発見機能をどう維持させるか、債券と株式の違い

日銀をはじめとした当局者が債券市場の価格発見機能が失われていることに警鐘を鳴らしています。先日、国内債券市場で最も流動性の高い国債のある年限の取引が行われなかった日が発生したという記事を読みましたが、たしかにこれは異常事態であるように思います。

債券市場が機能しない場合にどのようなことが起こるのでしょうか。投資家の立場では市場が機能しなくなり、流動性が極端に低下すると、自身の債券ポートフォリオで抱えることができるリスクを下げる必要に迫られるように思います。売るに売れないポジションを抱えておくのは投資家として怖いはずです。このように市場が機能しなくなると、投資家の債券への需要は低下するものと思われます。
そして債券への需要が低下すると、発行体にとっても資金が必要なタイミングで、信用力に応じた金利水準で資金調達を行うことが難しくなる可能性が高まります。国債市場は社債市場を含めた債券市場全体の基準となりますので、これは国債市場に限らず、社債市場にも当てはまります。
このように考えると当局が国債市場の機能低下を警戒するのも理解できます。しかし一方で現在の財政状況を債券市場が正確に評価した場合、どのような評価(金利)が付くのかを考えると、少し怖い気もします。

債券市場と同様に株式市場でも、日銀や公的年金による株式購入で市場の機能不全(株式市場の場合は新陳代謝が起こらなくなること)が懸念されています。こちらは5月の日銀のETF購入額がゼロになるなど、改善に向けた具体的な動きが確認されています。日銀の株式購入は元々禁じ手とされていたこともあり、購入額がゼロになったことを歓迎する意見が多いように思います。

同じ正常化に向けた動きであっても、債券市場と株式市場では受ける印象が異なります。これは国債市場が国の資金調達、ひいては国全体に大きな影響を与えてしまうことに起因しているように思います(株式市場の場合、影響の範囲は株式投資家という国民の一部に留まりますし、株式市場の価格発見機能は元々しっかりしていないという側面があるようにも思います)。債券市場の正常化が大きな問題を起こすことなく進んでほしいものだと思っています。