米国では新型コロナからの回復のため、政権(米国民主党)による積極的な財政支出や中央銀行による緩和的な金融政策が続けられています。その結果として金利や物価が上昇しすぎることが懸念されていますが、米国当局は「問題ない」「一時的である」として、そうした懸念の火消しに躍起になっています。
当局がこれまでの政策を維持するための理屈として「これまでの金利が低すぎた」「ボトルネックが解消すれば供給は回復する」「低インフレが継続していたので多少の上振れは許容される」といった具合に様々な理屈があるのでしょうが、おそらく新型コロナによって発生した失業を元に戻すことが最終的な目標であるように思います。
そしてそうした目標設定に異議を唱える勢力も存在します。米国共和党は伝統的に小さい政府を志向しているとされますが、新型コロナの回復においても政府による過大な支出には反対しています。インフレ投資計画をめぐっても計画縮小を唱えていますし、失業問題についても「失業給付の上乗せが職場復帰の障害になっているのでは?」と異論を投げかけています。
このように両者の意見は真っ向から対立しているわけですが、双方の理屈ともに一理あり、また財政収支という観点でバランスが取れているところは、成熟した民主主義国家としてさすがと思わせるところがあります。
翻って日本のことを考えると、財政支出をどの分野に使うかという違いがあるくらいで、与野党ともに財政支出拡大路線であるように見えるところに一抹の不安を感じさせます。これでは国の借金が増えていく一方なのも致し方ありません。
日本は残念ながらいまだコロナ禍の最中にあり、財政均衡を意識する状況には遠く及ばないのだと思いますが、一方で現在の緊急措置を続けていくのはかなり困難であるように思います。いずれかのタイミングで財政均衡を意識するように舵を切れるのか、その時に金融市場でどのような反応が起こるのか、意識していきたいと思っています。