岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

人口が減る国で現代貨幣理論(MMT)は成り立つのか

拡張的な財政政策を理論的に支えている現代貨幣理論(MMT)について、その現実性を戒める記事を読みました。MMTとは、自国通貨建てでの借り入れが可能な政府は借り入れをどれだけ増やしても財政破綻することはないというものです。

たしかに通貨発行によって借り入れを返済すれば良いわけで、財政破綻は起こらないのはその通りだと思います。ただ通貨発行により通貨に対する信認が低下し、高インフレが発生するのをどう回避するのかが、MMTの最も大きな問題だと理解しています。

この記事はMMTに対して否定的だったのですが、記事内ではインフレの抑制云々については紙幅を割かず、そもそも人口増が見込めない経済ではMMTの悪影響がより大きくなることを指摘しています。

借り入れは将来世代によって返済されるわけですから、その将来世代の数が減っている今、MMTの成立と負担の吸収はより困難になるのではないか、ということです。このためMMTは日本での導入は難しく、米国であれば導入の可能性がないわけではないとしています。

f:id:reedonshore:20211231165034p:plain

国債通貨基金の「財政モニター」より

 

この「将来世代への負担を考慮すべし」という考え方はごくごく当たり前のことを言っています。MMTが制約としている「インフレの抑制に注意すべし」も当然なことで、ただそれをインフレを抑制するのがものすごく難しいだけです。

私はMMTのように後付けで政府や市場の現状を正当化する理屈が出てくる場合、その考え方は間違いである可能性が高いと思っています。日本でもバブル時期に株高を正当化するQレシオという考え方が提唱されました。このため「将来世代の負担を考慮すべし」「インフレの抑制に注意すべし」という懸念のいずれも的中してしまうように思っていますが、さてさてどうなることやら…