岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

ワクチン特許を放棄せよ?

米国が新型コロナ・ワクチン特許の保護を解除することを各国に呼びかけているそうです。この措置は一時的なもののようですが、相応の費用をかけてワクチン開発に取り組んだ製薬会社からすると、簡単に受け入れる話ではないでしょう。製薬会社だけでなく国として反発する国もあり、早速ドイツのメルクル首相は反対の意を表していました。


そのドイツ政府曰く「ワクチン生産の障害は特許ではなく、製造能力と品質基準」「ワクチン開発に対するインセンティブがなくなってしまう」とのことです。前者については本当かどうか分かりません(ドイツにはワクチン開発を主導したバイオンテック社があり、ポジショントークの可能性があります)が、後者については確かにそうだろうなと思います。

 

新型コロナ・ワクチンについては、変異種に対応したワクチン開発の必要性が今後高まるかもしれず、将来に備えて製薬会社に対するインセンティブはあった方が良いと思います。製薬会社からすると利益につながらないワクチン開発に、多額の投資を行うことは難しいはずですから。

 

今回のワクチン開発にあたっては最初に開発のゴールにたどり着いたファイザー・バイオンテック連合は、開発にあたって米国政府の補助金を受け取らなかったそうです。補助金を受け取ると進捗に関する政府への報告を求められること、また政治に巻き込まれることを懸念したそうです。同連合のようにリスクを取って開発に取り組んだ企業がしっかりと報われる仕組みを作ってこそ、今後同じような事態に直面した際に、治療薬開発に取り組む企業が出てくるものだと思います。ワクチン特許については二転三転がありそうで、今後の推移に注目です。

※この記事を準備して以降「ワクチンに関する知財で大事なのは製造技術であり、ここを抑えている限り製薬会社の収益に与える影響は限定的」という意見を読みました。それであればインセンティブへの悪影響は杞憂になりますが、実際のところどうなんでしょうね