だいぶ前の話ですが、ゴッホの絵「ひまわり」をめぐって日本の保険会社が訴えられていることが記事になっていました。訴えたのは1934年までこの絵を所有していた銀行家の子孫で、私が読んだ記事では明らかになっていませんでしたが、1934年に絵画を手放したのは1933年に始まったとされるナチス政権の影響であり、手放した取引は無効という訴えなのだと思います。
こうした絵画の返還はゴッホに限らず起こっているようで、クリムトの絵画の返還をめぐる「黄金のアデーレ 名画の帰還」という映画を見たことがあります。遺族の訴えが法的な正当性があるのかはともかくとして、遺族側には様々な思いがあることだろうと思います。
ただ保険会社からすると、今回の訴えはたまったものではありません。この保険会社がナチス政権に加担していたわけではなく、いわば事故に巻き込まれたようなものですが、「ひまわり」とこの保険会社のイメージがかなり強く結びついているだけに、遺族の訴えが認められたり、今回の訴訟が広く知られると、イメージ悪化は避けられません。
今回のように歴史的な問題は(主に被害者の)感情に左右されがちで、ただそれは特に被害者の立場では当然のことだと思っています。保険会社側もメディア対策を行って、企業イメージの保全に努めるでしょうし、今回の訴訟の続報が今後日本国内でどれだけ取り上げられるのか分かりませんが、少し意識して見守りたいと思います。