岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

公的な運用主体は政治からの圧力を受けやすい。米国の公的年金がロシア資産の売却について政治の圧力を受ける

公的な団体はその性格上、国民ないしは住民の代表である政治家の監督下にあることが一般的です。役所のような行政サービスを提供する主体の場合、選挙を通じて選ばれた政治家(地方自治体は知事や市長等、中央官庁は内閣総理大臣が任命された大臣)が選挙民の意思を代弁する形で役所等を管理しています。
問題をややこしくするのは専門的なサービスを提供する主体の場合です。政治家が当該分野に詳しくなく、政治家による管理監督が適切でない結果に結びつくことが起こり得るため、政治家の影響は最小限となるように工夫して組織作りされることが多いと思います。

さて、ロシア関連資産の売却をめぐってアメリカの公的年金が売却時期について政治家による圧力を受けていることを伝える記事を読みました。記事によると米国の州知事は、ロシアが投資不適格であることを伝えるため、監督下にある公的年金に対してロシアへの投資を打ち切るように求めているそうです。
問題となるのは現在の価格で無理に売却するとロシア関連資産はほぼゼロの価格で売却することになってしまうことで、そのことを懸念する声があることを記事は紹介しています。

ロシア関連資産の保有問題にに興味を持つ選挙民は少なく、またロシア関連資産を継続保有することが間接的にロシア企業等を利する可能性もないとは言えない(私は賛同しませんが)ことを考えると、州知事の行動は理解できます。ロシア関連資産の売却を自らの実績として選挙民にアピールできるからです。
ただし本ブログで度々記事にしているように、売値がほぼゼロとなるこのタイミングでロシア関連資産を売却することは運用上は得策とは思えません。監督者の指図によるとはいえ、運用上は得策でないと思われることをどこまで許容するか、この公的年金は問われているわけです。

この公的年金の資産は分散投資されているため、仮にほぼゼロとなる価格でロシア関連資産を売却しても、年金制度の継続に問題をもたらすことは考えにくいそうです。このため継続保有も矯正売却も、どちらの選択肢も選択可能と言えます。
ロシア関連資産はこの組織の取締役会で議論されるとのことで、議論の結果どのような結論となるのか、売却することになった場合にどのくらいの時間をかけて売却するのか、注目しています。

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