岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

反対意見が投資家への利益保証に結びつくかもしれない皮肉

エネルギーの確保は国家の重要課題です。昨今のウクライナの問題でも、ロシアからドイツに輸出される天然ガスの取り扱いが問題になっていました。そんな中、欧州の原子力発電をめぐる面白い記事を読みました。

福島の事故を受けて脱原発の動きが広がりましたが、その度合いは国によってまちまちです。すでに原子力発電に多額の投資を行ってきた国は簡単に原発を廃止できるわけもなく、そうした国では引き続き原子力発電が推進されています。ドイツは脱原発に熱心ですが、フランスは原子力発電に積極的な姿勢で知られています。

問題を複雑にするのは福島の事故が起こるまで原発二酸化炭素を発生しないクリーンな電源と目されてきたことです。実際に原発二酸化炭素を排出せず、クリーンであることは確かです(事故の影響を考慮すると複雑な問題になりますが…)。
欧州は環境問題に熱心ですが、原子力発電をやめてその分の電力を風力発電太陽光発電でまかなえるかというと、現時点では技術的に難しいようです。とはいえ二酸化炭素を排出する火力発電に移行するのにも抵抗があるでしょうし、深刻なエネルギー不足に悩む欧州がどのような判断をくだすのかが注目です。

記事の中で原子力発電は長期にわたる投資であり、投資家の立場で見ると利益が保証されていないとこうした分野に投資しにくいとした意見が紹介されていました。たしかに多額の投資を行った後に脱原発になるリスクを考えると、投資家は怖くて投資できません。太陽光発電を推進した際に実施されたような買取保証、しかも原子力発電の場合は長期にわたる保証が必要になるわけですが、原子力発電を推進するにはそうした手厚い保証が必要になるかもしれません。

本来であれば原発は低コストな発電方法であり、電力会社は自主的に原子力発電に取り組んできました。この記事で示唆されているように手厚い保証が必要になる可能性があるのは、原発に対する反対意見が長期的な投資を妨げるからです。反対意見の存在が投資家への利益保証につながる可能性があることはとても興味深い現象です。

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