岸辺の日記

日常のあれこれを記録します

自社株買いの否定は経営者の仕事の一部を否定することになりかねない

岸田首相が企業の自社株買いに対して否定的な答弁を行い、話題になっています。自社株買いを制限すべきとの野党議員の質問に対し、慎重に考える必要があるとしながらも自社株買いに制限を課すことを検討するように受け取られる回答をしています。
給与所得増を政策目標として掲げる岸田首相らしい発言と言えますが、株式市場は否定的に反応しました。自社株買いは株価上昇要因と捉えられることが一般的であるだけに、市場の反応は当然だと思います。

この発言を伝える記事の中で赤字決算を発表した際に株価維持のために発表される自社株買いは制限の対象となるのでは、という考え方が紹介されていました。実際に日本取引所ガイドラインでも株価維持を目的とするような自社株買いを制限するような規定があるそうです。

企業経営者の仕事を大きく捉えると、経営資源つまりお金を、給与を含めた事業投資に使うか、自社株買いを含んだ株主還元に充てるかの、どちらかを選択することと整理することができます。
株主還元には自社株買いだけでなく配当という形もありうるわけですが、いずれにしても今回話題になった考え方に基づくと株主還元を縮小させることになり、この場合に企業経営者は事業投資が得策でない環境下であっても事業投資を選択せざるを得なくなります。例えば事業環境が悪すぎて新規投資を控えるべきと判断しても、その決断を実行するのは難しいわけです。

政権が給与所得を含めた事業投資を選択してほしい気持ちは理解しますが、私は企業経営者に複数の選択肢から常に最善手を選んでほしいと思っており、それを妨げるような発言はするべきではなかったな、と思っています。

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